ツンデレ副社長は、あの子が気になって仕方ない
「おやおや、嫉妬深いナイトのご登場だ」
両手を上に挙げて“降参”ポーズのまま霧島さんが振り返ると、その向こうにいたのは貴志さんだった。
息を切らせて、呼吸も荒くて……全力疾走でもした感じ?
「何してるんだ織江。どれだけ探したと――酒、飲んだのか?」
ふいに彼の声が強張って、その視線が私の手のグラスを見つめていることに気づく。
「こ、これはっ」
「男に誘われれば、ほいほい飲むのか? 話があるから飲まないでくれって頼んだのに」
一方的な言いがかりに、こっちもムッとする。
失態演じるほど酔っぱらったことはないし、大体、グラスを見れば全然お酒が減ってないことはわかりそうなのに。
そんなに怒ることないじゃない。
思わず言い返そうと口を開きかけた私を止めたのは、霧島さんだった。
「男の嫉妬はみっともないですよ」
冷静な声に、貴志さんがぐ、と視線を険しくする。
「侑吾に言われたくない――織江、行くぞ」
ひょい、と私の手から抜き取ったグラスを霧島さんへ半ば強引に押し付け、貴志さんは私の手を取るとずんずん大股で歩き出した。
「ちょ、ちょっと待ってくださいっ……どこに……貴志さんっ!?」
あまりの勢いに、彼に話しかけようとしていた人たちがギョッと後ずさって道を開けてくれるくらい。
止めるのは無理だと私も早々に諦めて、手を引かれるまま、小走りで彼に着いて行くしかなかった。