ツンデレ副社長は、あの子が気になって仕方ない
数分後。
「え? え? ぁあのっ……帰るんじゃ、ないんですか?」
私は軽いパニックに襲われていた。
なぜなら、乗り込んだエレベーターは予想に反して上昇を続け、最上階で停止。
私はたちまち、スイートルームらしき豪華な客室に連れこまれてしまったから。
しかも、フロントにも寄らず、随分タイミングよく部屋の鍵を持ってたような……? あぁもしかして、今日は最初からここに泊まるつもりだったんだろうか。
……私と? ……なわけ、ないか。
部屋の中央に置き去りにされた私は、落ち着かない気持ちで窓枠に背をつけてもたれる彼を見つめた。
腕を組み目を伏せる彼からは、まだ怒りのオーラが漏れている気もする。
「あの、……本当に、お酒は飲んでませんよ? 乾杯はしましたけどっ――」
「悪かった」
「え?」
ぼそっと聞こえた謝罪に、とっさに返す言葉を探していると、
「くそっカッコ悪すぎ」
貴志さんは毒づきながら、ぐしゃ、ときっちり整えられた前髪を鷲掴んだ。それがなぜかとても苦しそうな顔に見えて、一歩二歩と引き寄せられるように近づく。
「貴志、さん?」
間近で見上げると、その昏い眼差しとぶつかった。
「侑吾が言ってただろ。“男の嫉妬”だ。織江は何も悪くない」
し、嫉妬?
「織江が、侑吾と楽しそうに話してるの見て、嫉妬したんだ。オレとの初対面の時は、あんなカオ見せてくれなかったのにって」
初対面って、秘書室で働き始めた2年前よね。
ただただ緊張してたことしか思い出せないけど……
「そんな昔のこと覚えてるんですか? な、なんかそんな風に言われたら、まるで貴志さんが私のこと好き、みたいに聞こえ……って、すみません! 調子に乗って暴走しました。忘れて下さ――っ!!」
冗談めかして最後まで口にする前に、伸びてきた腕に強引に引き寄せられ、私の身体は広い胸に飛び込んでいた。
「た、貴志っさ」
「いい加減鈍いにもほどがあるぞ。そうに決まってるだろ」
低い声が苛立ったように言い、私をさらにきつく深く抱きすくめる。
一体何が、起こってるの……?
「そ、そう、ってあの」
「……好きだ」