ツンデレ副社長は、あの子が気になって仕方ない
「……さすがに相手が悪すぎるぞ。入り込む余地は万に一つもない」
侑吾のためだ、とバッサリ言ってやって、肩を並べて立つ。
せめて政略結婚で関係が冷え切ってるとか、そういう事情があるなら侑吾にもチャンスはあるのかもしれないが……無理だろう。
抱きしめた息子に両方から頬をすり寄せた2人が、こちらへ気さくに手を振る。そして背を向けて歩き出して、その周りを子犬が楽し気にじゃれついて……
眩しい陽光に包まれる3人は、神から祝福された幸せな家族の姿そのものだ。
「なぁ、どうしてわざわざ傷をえぐられに来るんだ?」
「……キングの代わりに、SDの会議に出席していただけですよ」
淡々とした口調の中に自虐的な響きが潜んでいる気がして、リモート参加だってできただろうに、と口まで出かかった言葉を飲み込む。
「へぇ」とだけ返して、中庭の上に広がる青空へと目線を上げた。
報われない片想いと女漁りなんかさっさと止めて、別の誰かと本気で向き合えばいいのに。侑吾の想いを知ってからずっと思ってきた。
いつまでこんな不毛な恋愛感情で時間を無駄にする気だ。ユキの手を取ってやれよ。彼女だっていい女じゃないか――と。
でも、どうしてだろうな。
今はなんとなく……わかるような気もする。
忘れるべきだとわかってるのに、忘れられない。
考えるべきじゃないとわかってるのに、考えてしまう。
どうしようもなく、なぜか、狂おしいほどにたった一人のことだけを――
……織江に会いたい。
抱きしめたい。
彼女への想いを、諦めたくない。
はにかむような笑顔を思い出しながら、オレはもう、何も言わなかった。