ツンデレ副社長は、あの子が気になって仕方ない
写真を見る限り、おそらくゴールデンウィーク前後のものだと思う。
貴志さんに初めてを捧げ、覚悟を決めて“S”に連絡を取って。
――お久しぶりです。突然ご連絡してすみません。
――私たち、もう一度やり直せませんか?
その後……
まさか尾行されて写真まで撮られていたなんて、まったく気づかなかった。
自分の迂闊さを呪い、きつく唇を噛んだ。
「ふーん、何も言えないんだ。そういうことみたいですよ、村瀬さん」
ドン……ッ! と心臓が激しく打つ。
何か言わなきゃ、と思うのに、口が動いてくれない。
貴志さんの顔を、見られない。
どんなカオをしてるのか、自分が、彼が……
知られたくないし、知りたくない。
指先の感覚がなくなるほど、パイプ椅子に強く爪を立てる。
汗が滲み、流れ落ちた――その時。
「……じゃあ君は」
掠れた声が聞こえた。貴志さんだ。
「彼女が金のためにオレに近づいたと、そう言いたいわけか?」
冷静なようでいて、どこかバランスを欠いたその口調には彼の押し殺した怒りが見え隠れしていて、目の前が真っ暗になった。
「はい、事実ですから。残念ですけどー」