ツンデレ副社長は、あの子が気になって仕方ない
ちっとも残念がってる雰囲気のない口調が、絶望を煽る。
逃げ出したいのに、足は一歩も動いてくれなかった。
「大丈夫ですよ、これからはあたしが正式な婚約者として、そして妻として、村瀬さんをしっかりサポートしますから。あ、もう貴志さんって呼んでいいですよね? 新婚旅行はどこにします? あたしはまずパリでお買い物――」
バン!
鋭く響いた硬い音に、「きゃっ」とキララが悲鳴を上げた。
私もハッとして、視線を上げる。
それは、アルミ製のアタッシュケースが会議机に置かれた、というか叩きつけられた音だった。
貴志さんは無言のままロックを解除して開け、一番上にあった大判の白い封筒を手に取る。
入っていたのは、二つ折りになった台紙。その時点でそれがどういうものか想像はついたけれど、彼はわざわざ開いて中を見せてくれた。
もちろんそこには私が映ってる。
あぁ成人式の時の写真を渡したんだ、お父さん。
そうよね、お見合い写真なんて、撮った記憶ないと思ってた。
お母さんの形見の振袖を着た私が、成人式の会場の入り口に立ってるだけの写真。ノリちゃんのお母さんが撮ってくれたヤツだ。よくそんなもの探し出してきたな――
ぼんやり考えていると、冷ややかな声が問いかけた。
「何か、言いたいことは?」