ツンデレ副社長は、あの子が気になって仕方ない
デスク周りを片づけた私は半休をもらい、もの言いたげないくつもの視線を振り切るようにして会社を後にした。
貴志さんのマンションへ直行し、荷造りをする。
もともと彼から離れなきゃと少しずつ整理していたし、ほとんどが彼の用意してくれたものだから置いていくしで、それほどの時間はかからなかった。
このまま、前のアパートに戻るつもりだ。
解約しなくて、本当によかった。
預かっていたカードキーをリビングのテーブルへ置く。
玄関はオートロックだから、出ていく時にこれは必要ない。
そして――と、私は視線を手の平に落とした。
シャラ、と繊細な音を立てる鎖の先に、薄桃色のチャームが輝いている。
これだけは、持っていかせてもらおう。
首の後ろで留め金を留めてから、慣れ親しんだ光景をもう一度目に焼き付ける。
楽しかったな……
一緒に買い物に行ったり、食事をして、リビングで映画を観たり……
最初は使いづらいと思っていた高機能家電に埋め尽くされたキッチンも、広すぎて落ち着かなかったリビングも、今では自分の一部みたいに愛おしい。
光の降り注ぐリビングダイニングをぐるりと見渡した私は、とりとめもなく、彼と自分とを巡る時間に思いを馳せた。
すべての始まりは、2年前だった。