ツンデレ副社長は、あの子が気になって仕方ない
もちろん、落とせるなんて思ってないし、落とそうと試すこともしなかった。
私みたいな人間が、彼の人生の邪魔をしてはいけないことはわかってる。
彼にはもっと、相応しい人がいるはずだ。
お父さんの『まだか』という催促を『仕事を覚えるので精いっぱい』とのらりくらり躱し、『やっぱり役立たずね』とお継母さんに罵られ続けた2年間が過ぎていった。
それでも私は幸せだった。
彼はボンクラなんかじゃなかった。それを証明するかのような目覚ましい活躍を、間近でつぶさに見届けることができたのだから。
“お世話になりました”
書いていたメモ用紙にポタッと涙が落ちてきて、慌ててぬぐった。
ポタポタ……後から後からあふれてくる熱いものに、苦い嗚咽が混じる。
「っふ、……ぇ……っ」
私を見つめる、哀しげな眼差しを思い出す――胸が押しつぶされるように痛くて切なくて、たまらなく苦しい。
どうして、愚かにも欲張ってしまったんだろう。
最後に思い出が欲しいなんて、思ってしまったんだろう。
あの最初の夜さえなければ、地味ないちOLに彼が関心を向けることなんてなかったのに。
私たちの距離は縮まらず、彼を傷つけることなんてなかったのに。
「っ、ぃ……、っ」
全部、全部私が悪い。
私が悪いんだ……
重力に負けるようにずるずると、その場にしゃがみこむ。
胸元のペンダントを握り締めながら、声を殺して泣きじゃくって――私はなかなか立ち上がることができなかった。