ツンデレ副社長は、あの子が気になって仕方ない
『妹さんはどこまで知ってるんでしょうね?』
「いえ、あの子は何も知らないと思います。あれがパパ活の証拠写真だと信じ込んでいました。ただ、あの子にあの写真を渡した人物が同じように考えているかは、わかりませんけど」
『写真を渡した人物、ね。誰だと思います? 妹さんが自分で探偵を雇う可能性もあるでしょう?』
「いえ、彼女が私のプライベートに関心を持つはずはありません。特に、あの写真が撮られたゴールデンウィークの頃、まだ彼女は佐々木君に夢中でしたし」
『ということは……』
「……おそらく、一星の関係者、じゃないかと」
例えば、社長秘書、とか。
『なるほど、すでに山内社長にバレてるかもしれない、ということですね』
「それはなんとも……すみません、尾行には十分気を付けていたつもりなんですが」
『いやいや、もしプロを雇っていたのだとしたら、素人じゃとても気づきませんよ。あなたのせいじゃない』
「でも……これで計画が狂ってしまうのでは?」
『いや、そうでもありませんよ。相手はおそらく、あなたが一人で動いていると思っているでしょう。大したことはできないと、高をくくってる。だからこそ、あんな写真をあなたに見せた。警告のつもりでね。しかしこっちの準備はもう大詰めですからね。ほぼほぼチェックメイト、我々の勝ちです。大船に乗った気持ちでいてくださいよ』
「本当になんてお礼を言ったらいいのか……私は何もできなくて」
『いやいや、動く人間は最小限の方がいいんです。その方が、結局上手くいく』
「はい……」
スマホを片手に頷いた私は、ピタリと歩みを止めた。
アパートの前に路駐する、黒塗りのセダンに気づいたからだ。
「すみません、後でまたかけ直します」
早口で言い、急いで画面をタップ。
それを見ていたかのように運転席から降りてきたのは、お父さんの秘書・塩沢さんだった。
「織江お嬢様、お久しぶりでございます」