ツンデレ副社長は、あの子が気になって仕方ない
まだ太陽が高い位置にある時間帯にも関わらず帰宅したことには、一言も触れない。そのままスッと細めた目で、片手にスマホ、片手にボストンバックを下げた私を上から下まで眺める。探るように。
「ここしばらく、どちらにお泊まりだったんですか?」
「友達の所です。管理人から聞いてるでしょう?」
「……友達、ねぇ」
嘲るような色を隠そうともしない視線で、ピンときた。
キララに写真を渡したのはこの人だと。
「まぁいいでしょう。そういうことにしておきましょうか。どちらにせよ、お嬢様にはご実家に戻っていただきます」
手から奪われた荷物が強制的に後部座席へ放り込まれるのを見て、私は唖然とした。
「実家?」
「えぇ、お父様からのご命令です。しばらく大人しくしていただかないと。少なくとも、キララお嬢様のお見合いが無事に終わるまでは」
「……私が邪魔すると思ってるんですか?」
「邪魔するんですか?」
「っ、私が聞いてるんですけど」
肩をすくめた塩沢さんは、高い位置から私を見下ろし、わずかに声を低くした。
「何を企んでいるのか知りませんが、余計なことはしない方がいいですよ」
警告――やっぱりこの男だ。
私のことを調べて写真を撮って、それをキララに渡したのは。
「あなただって、もうあの時のような思いはしたくないでしょう? 身の破滅を招きますよ」
「……あの、時……?」
ふいに、背筋を気味の悪い汗が這う。
同じだ。
そう、この男に同じような台詞を言われたことが、以前にもある。
『余計なことをしないでくださいね。身の破滅を招きますよ』……と。
その直後だった。
佐々木君の浮気が発覚し、キララとの婚約発表があって、私に関する根も葉もない噂が広がって会社に居づらくなり……
これは、偶然なの?
陽炎が揺れるほどの真夏の熱気にも関わらず、私はゾクリと寒気を覚えた。