ツンデレ副社長は、あの子が気になって仕方ない

理由は簡単。塩沢さんからの報告で私のパパ活を知ったお父さんが、「お前のようなふしだらな娘は外に出せない」と激怒したからだ。

つまりお父さんは、キララと同じくあれ(・・)をパパ活だと信じてる。

塩沢さんの動向は不気味に感じるものの、ひとまず安堵した私は、外出時にすら運転手という名の監視がつく不自由な環境も我慢し受け入れた。

お継母さんやキララの理不尽な要求にも、はいはい、と大人しく従う。
反論なんてもってのほかだ。この後に控えるイベント(・・・・)を悟られるわけにはいかないもの。ひたすら従順な仮面をつけて、言われるままにてきぱきと家事をこなす。

ところが、これがなかなか難しい。

お稽古事とか家事は、それでも心を無にしてこなせばいつか終わるけど、意外と辛いのが、キララの相手だった。なにしろあの子ときたら毎朝毎晩、わざわざ私を探し出し、貴志さんの話を得意げに披露してくれるから。

優秀な仕事ぶりを褒めてくれたとか、ランチに連れていってくれたとか、好みのブランドの話で盛り上がったとか……お見合いの話は今のところ棚上げになっているらしいものの意外なことにキララの勤務は続いていて、本人曰くかなり順調らしい。もちろん両親は大喜びだ。

まぁ半分以上は私を動揺させて面白がるための嘘だと思う。
ノリちゃんから、初日で彼女が新プロジェクトから外されたって、ラインも来てるし。派遣会社から彼女のフォローのために一人、新たに寄越されたっていう情報ももらってる。

それでもやっぱり、傍にいられる彼女に嫉妬してしまう気持ちはどうしようもないわけで……。

毎日のように思い知らされる。
彼を諦めることが、どれほど難しいかって。

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