ツンデレ副社長は、あの子が気になって仕方ない

「料理教室に通ってるの。花嫁修業ってやつ? ほら、ラインでも教えたでしょ、茶道とか華道とか……結構面白いよ」

笑顔で言ってみても、付き合いの長いノリちゃんは誤魔化されてくれない。

「ねぇ、もっと語学を勉強したいからって辞めたんじゃなかったの?」

「うん、その……そっちもちゃんとやってるよ。独学だけど」
「本当にそれが織江の望み?」
強めの口調で言ってから、少し気まずそうにノリちゃんは「ごめん」と吐息をついた。

「織江の家族のこと悪く言いたくないけど……ちょっと最近、あの妹のせいでイライラしててさ」

あぁやっぱりそうだよね、と申し訳なさが募った。

運ばれてきたアイスコーヒーのグラスに指を滑らせ、恐る恐る「仕事、迷惑かけてるの?」と聞くと、“察してくれ”と言わんばかりに大げさに肩をすくめられた。
「控え目に言って、サイアクね」

予想はしてたけど、というより、もっとひどかったらしい。
ノリちゃんの話だと、自席で堂々とネットサーフィンやゲームをしていることもあるそうで、注意されると“情報収集だ”と開き直るのだとか。

「翻訳アプリに訳させた文章をそのまま提出された時は、さすがに高橋さんもキレて厳しく注意したわけ。そうしたらあの子なんて言ったと思う?」

あの人をキレさせるなんて、何やってるのよ……。
「なんて言ったの?」

「『じゃあ今度から、友達の中国人に頼みます。日本語もバッチリできる人だから、大丈夫ですよ』って」

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