ツンデレ副社長は、あの子が気になって仕方ない
都合のいい想像に飛びつきかけたが、いやいやと自制する。
織江のことは信じたい。
しかし、彼女がホテルでオレを誘ってきたことは事実だ。
複数の男と会っていたことも。
そして何より、妹に何を言われても、オレに問い詰められても、彼女は否定しなかった。肯定すらしてみせたじゃないか……
困惑するオレの背中を、ユキが押した。
「嶋さんの話だと、最近の土曜の夜は彼女、パン教室に通ってるそうよ。このビルの8階にもパン教室があるから、たぶんそこに行ったんだと思う。ホームページでチェックしたら、あと1時間くらいで終わるの。だから絶対に彼女を捕まえて、2人で話し合いなさい。いいわね!?」
一方的に言いたいことだけ言うと満足したのか、颯爽と立ち去ってしまう。
残されたオレは織江がいるであろうそのビルを見上げ、「どうしろっていうんだよ」とぼやいた。
3週間前の衝撃と痛みは、まだ生々しい。
傷口も塞がってないのに、また彼女から同じような台詞を聞かされたら、情けない話だが、本当に自分が何をしでかすかわからない気がした。
彼女だって、オレと顔を合わせたくはないだろうし……
このまま帰ってしまおうか、という考えが何度も過る。
けれど結局。
オレはとどまることにした。
彼女にもう一度会いたいという想いが勝ったのだ。惚れた弱みっていうやつだろう、間違いなく。
そんな自分に自嘲気味な嗤いをこぼし、オレは周囲を見渡した。
そのまま外で待ってもよかったのだが、次第に大胆に、無遠慮に寄こされる女たちの視線が鬱陶しい。そのうち声をかけられるな、と舌打ちしたオレはどこか近くに適当な場所はないかと考えて――目当てのビルの地下にバーが入っていることに気づく。
そして、そこで時間を潰すことにしたのだった。