ツンデレ副社長は、あの子が気になって仕方ない
いや、具体的にどこの誰だと言えるわけじゃない。
ただ、どこかで会ったことはある。間違いない。
名刺交換をしたような間柄ではないな。記憶力には自信があるし、必ず覚えているだろうから。
ということは、テレビの報道で見かけたとか、雑誌のインタビューを読んだとか……あぁくそっ思い出せない……
「……お姉ちゃんなんて、……」
唐突に耳をかすめた言葉で、ハッと現実に引き戻された。
「お姉ちゃん?」
織江の話題に食いついたのが面白くないのか、山内妹はピンク色の唇をムッとしたように歪めてから、意地の悪い笑みを浮かべた。
「先週の土曜日の夜、帰ってこなかったんです。きっとまたパパ活ですよ。朝帰りってことは、当然最後までヤッてるんでしょうね。お母さんもカンカン。『嫁入り前の娘が恥ずかしくないのか』って。あの人、昔っからそうなんです。お母さんやお父さんの言うこと全然聞かなくてー。貴志さんもラッキーでしたね、あんな人の罠に嵌まらなくて」
オレの反応を伺いながら、熱心に姉を貶めようとする醜いカオにゾッとした。
こんな義妹と継母がいたら、実家での織江が針の筵だっただろうことは容易に想像できる。
「ユキの言った通りだな」
「え? なんですか?」
「いや、なんでもない」
よっぽど朝帰りの原因はオレだと暴露してやろうかと思ったが、彼女の立場が今より悪くなってはいけないと自重した。