ツンデレ副社長は、あの子が気になって仕方ない
六本木の一角にある目的地に着くと、山内妹はウキウキと跳ねるように車から降りた。しかし目の前の店を一目見るなり、その表情が一変する。
「……へ? こ、ここ、ですか? え? だって……その」
ケバケバしいネオンこそなく、ごくシンプルに上質な空気を醸し出すエントランス。だが、大理石で造られた重厚な入口から続くそこがミシュランレストランではないことには、すぐ気づいたらしい。
口をぽかんと開け、恭しく出迎える黒服の男を凝視するその顔はかなり間が抜けていて、正直吹き出しそうになった。
「酒を飲む、といったはずだが?」
「や、ええと、そうですけど……だってここっ――」
「まぁまぁ村瀬様! ようこそ、お待ちしておりました」
華やいだ声がかぶさるように響く。
続いて、中からアラフォーくらいだろうか、着物姿の女性が姿を見せ、婉然と微笑んだ。
「葉子ママ、久しぶり」
「ほんとにお久しぶりで、嬉しいわぁ。お見限りかと思いましたよ」
ひどい人だと悪戯っぽく胸元を叩かれ、オレは苦笑する。
そのやりとりを唖然としながら見ていた山内妹が、引きつった顔のままスーツの裾をつかんできた。
「貴志さん、ま、待ってください……冗談ですよね? こんな、よ、夜のお店じゃないですかっ!」
「だから? オレと見合いをしようというからには、オレが多少遊んでいることくらい、承知してると思っていたが」
淡々と返せば、今度こそその顔がピシッと固まった。