ツンデレ副社長は、あの子が気になって仕方ない

「ひ、ひどいですっこんな店に来なくても、あたしが十分癒してあげるのにっ」
こんな店(・・・・)? あらあら村瀬様、こちらのお上品な女性はどちらのお嬢様ですの?」

朗らかな口ぶりで言っているが、葉子ママの目は笑っていない。

「あぁ、うちの社員だ。オレと飲みたいっていうから、連れてきた」

「まぁそうですか」
頷いて、上から下まで容赦ない視線を注ぐ。

この店のオーナーは侑吾で、客層は普通のクラブとはワンランクもツーランクも違う。
オレですら、よほどの商談相手しか連れてこないほど。つまり、日々そんな経済界の重鎮たちの相手をしているママの()は、凄まじいものがあるわけで……。

さすがに経験値の差というか、格の違いのようなものを感じるのか、山内妹も居心地悪そうに身をすくめている。

「もちろん、女性のお客様も歓迎いたしますわ。うちの子たちに、淑女の正しいマナーを教えていただきましょうかしら。男性の気を引きたければ、断りなくいきなり服を掴みなさい、とか?」

バカにされたことに気づいたのか、パッと彼女は手を放し、悔しそうに頬を膨らませた。

「そ、そういえばお父さんと約束があったんでした! 帰りますっ!」

顔から湯気が出そうな勢いで叫んだ彼女を、オレは笑いを堪えつつさっきの車に乗せてやった。運転手に家まで送るよう伝えて、送り出す。


「……助かったよ。なかなか厄介な奴でさ」

やれやれと脱力するオレへ、葉子ママは心得ているとばかりにっこりと微笑んだ。

「さ、中へどうぞ」

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