ツンデレ副社長は、あの子が気になって仕方ない

「驚くというか、ホッとしました」
「ホッと?」

「村瀬様も、普通に悩んだりなさるんだなって」

白く細い指が、オレの膝へ遠慮がちに触れた。

「村瀬様はいつも完璧な方だったから、なんだか嬉しい。そんな姿を見られて」

熱っぽい視線はだいぶ前から知っていたが、あえて気づかないふりをしていた。
だが――と、豊かに盛り上がった胸元に視線が落ちる。

もう織江に触れることは二度と叶わないだろう。

ならば、相手が誰でも同じなんじゃないか?

ヤケになっていたのかもしれない。
どうでもいいと思った。
この狂おしい想いを、一時でも忘れさせてくれるのなら……。

女の肩を抱いて引き寄せると、その身体は簡単にオレへと倒れ込んできた。

「怒らないのか? ここはそういう店じゃないって」

「ふふ。お互い同意してるなら、何も問題はないんじゃありません?」

「なるほど、確かに」

頬を歪ませて嗤い、その柔らかそうな唇を見下ろした。

「…………」

お互い無言のまま見つめ合い、それからその目を伏せてゆっくりと頬を傾ける。

ココナツの匂いが強くなった。
織江とは違う香りだ。彼女が好むのは、柑橘系のもっと爽やかな……

女の唇から、甘えるような吐息が漏れた。

「……貴志さん、てお呼びしても?」


――貴志さん。

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