ツンデレ副社長は、あの子が気になって仕方ない
ドクリ、と全身が戦慄き、オレは動きを止めた。
――あり、がとう、ございますっ……一生大事にします!
頭の中で涼やかな声が自動再生され、はにかんだ笑顔が閃いた。
織江……。
ふと気づくと、織江とは似ても似つかぬ女がこちらをうっとりと見上げていて、一気に全身が冷えていく。
しなだれかかる身体を押しのけて、一息に立ち上がった。
「む、村瀬様……?」
「……っすまない。魔が差した。忘れてくれ」
不満げな眼差しから逃げ、ほとんど空のグラスを手に窓へと近づく。
「もう1杯同じもの、頼めるか」
頭を冷やそうと、盛況の店内を眺めるふりをした。もちろん、窓ガラスには特殊な加工が施され、向こう側からは見えない。
そこに、背後の彼女が映っていた。
若干の気まずさを感じたが、さすがプロというべきか。すでに何事もなかったかのように、慣れた手つきでグラスへボトルの酒を注いでいる。
ホッとすると同時に、自分はこの後果たして織江以外の女を抱けるのだろうかと、絶望感にも似た思いをかみ締めた。