ツンデレ副社長は、あの子が気になって仕方ない
1階フロアでは、華やかに着飾ったホステスたちが客の間を蝶のようにヒラヒラと舞っている。
美しい女性は、世の中にあふれているというのに。
どうしてこれほど、たった一人の事ばかり……
砂を噛むような思いで考えながら、なんとはなしにそのまま彼女たちの動きを追う。
客は、一目で重役だとわかるような連中ばかりだ。まぁこの店の客層からしたら当然か。
侑吾のヤツ、どれだけ儲けてるんだか。
やがて、スーツではないカジュアルな服装の一団が目に留まった。
おそらくスポーツ選手か、芸能人あたりだろう。
随分派手にはしゃいでるな。
眺めつつ、残り少ないグラスの酒をコクリ、と飲み干し……ゲホっとむせこんだ。
「ゲホッ……ゴホッ……」
「大丈夫ですか?」
慌てて駆け寄りハンカチを差し出してくれた彼女の腕をつかみ、自分へと引き寄せた。
「む、村瀬様っ?」
「あいつは誰だ!?」
噛みつくように言ってオレが指さした先には、あの男がいた。
あの夜織江とバーで落ち合い、彼女に金を渡していた、あの男が。
「ど、どうなさったんですか? 落ち着いてください」
さすがに高級クラブにアロハシャツでは来れなかったのかジャケットを着用しているが、間違いない、あいつだ。
「いいから教えてくれ! あの奥のグループの末席にいる、太った男だ」
あいつが織江とどうやって知り合ったかがわかれば、これ以上の馬鹿な真似を止めることができるかもしれない。
頭に血が上っていたのか、自分でもおかしいくらいに無我夢中で迫ってしまった。しかし――