ツンデレ副社長は、あの子が気になって仕方ない

「やぁ遅くなりまして。お待たせしましたかな?」

「いえいえ、我々も先ほどついたばかりでして。このたびは、よろしくお願いいたします」

「いえいえ、こちらこそ」

社内で何度か見かけたことのある村瀬社長がにこやかに入ってくる。
若い頃はさぞかしモテただろうと思わせる、ロマンスグレーのおじ様だ。
続いて、うちの継母とは正反対、楚々とした藤色のワンピーススーツを纏った優しそうな奥様。

それから……

ネイビーのスーツ姿のその人が最後尾にとうとう現れる。
相変わらずの眉目秀麗ぶりに束の間ボケっと見惚れてしまいそうになり、急いでその目を伏せ、膝の上でスカートを握り締めた。

貴志さんは無言のまま、そんな私の前へきっちりと膝を揃えて座った。


「……えぇと、お見合いの相手は織江さんだということで、合意していたはずですが」

社長夫妻も腰を下ろしたものの、振袖姿のキララを見つめる視線は困惑げだ。

事前に何も連絡をしなかったらしいお父さんが、「まぁまぁ」と意味不明のフォローを入れる。
「いや、織江でももちろん構わないのですが、もしかしたらもう一人の方にも、実際に会ってみたいんじゃないかと思いまして」

「山内キララですっ。よろしくお願いします」

さすがに相手が社長ということもあり、何枚か猫をかぶることにしたようだ。
愛らしい笑みを浮かべて、上品に頭を下げている。

やればできるじゃない、と感心する一方で、口火を切るきっかけを必死に探す私。

いつ言うべきだろう。
今だろうか。
できるだけ早い方がいいんだけど……と挨拶の途切れるタイミングを測り、その場の様子を伺っていたら、社長の目線がこちらを捉えた。

「いやいや、申し訳ないが、我々は織江さん以外の方を我が家に迎えるつもりはありませんよ?」

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