ツンデレ副社長は、あの子が気になって仕方ない
「まぁそうだな。それだけじゃ無理だろうな」
意味ありげに貴志さんが目線を向ける先には、ぐしゃりと丸められたゲラ。
「そういえばさっき、最後に今井が面白いことを言いかけた。覚えているか? 織江がつついたらしい“ヤバい藪”って、なんのことだろうな? 『栄光コンサルティング』に関することだと言いかけていたみたいだが」
「……さぁ、なんのことだか」
嘯く塩沢は、ごく平然としている。
大丈夫なのかとハラハラしながら貴志さんを見るが、こちらも全く動じていない。うっすら微笑んですらいるように見えて、二度見してしまった。
「今井からこの話を聞いた時、オレが何を奇妙に思ったか話そうか。どうしてそこまでして塩沢光男は一星を守る義理があるのか、ってことだ。ただの秘書としての役割を大きく超えている。よほど大きな恩を感じているのか、あるいは、別の目的があるのか」
おもむろにジャケットの内ポケットから取り出したものを、貴志さんは座卓の上、スマホに並べて置く。長方形の小さな物体は――ボイスレコーダーのようだ。
彼の指が、再生ボタンを押す。
ピッと軽い電子音の後、ザザッ……ザザッ……と、しばらく何かがこすれるような雑音が続いた。
室内の全員が息を詰めてそれを見守る。
塩沢も、無表情を装っているが気になるらしく、チラチラと視線を投げている。
一体何が始まるんだろう……
待っていると……やがて男性のものらしき声が聞こえてきた。
知らない声だ。誰?
『……さん、……待てよ、兄さん! なんでまた架空コンサルの契約なんて結んでくるんだよ。もうたくさんだって言っただろう!』