ツンデレ副社長は、あの子が気になって仕方ない

明らかな戦意喪失だと見て取った貴志さんは、「そして一星も」とお父さんの方へ視線を移した。

「栄光から脱税方法を教授されていた企業の一つだった。ただし、その方法は取引業者を使ったリベート搾取じゃない。まぁさっきの動揺ぶりを見ると、なくはなかったんだろうが、メインではなかった。切り込むべき本丸は、一星グローバルマネージメント――海外支店の設立と管理のためシンガポールに設立された一星の子会社の方だ」

こ、子会社? と、想定外のキーワードに虚を突かれたのは私だけのようだ。

お父さんとお継母さんは揃って身体を戦慄かせ、言葉を失っていたから。つまり、思い当たることがありすぎる、ということみたい。

彼はそんな様子をものともせず、話を進めていく。

「一星百貨本店からこの子会社へ、改修費、研修費、様々な名目で頻繁に資金が送られてる。金はさらに別会社を経由後、一部は各国の政府高官に賄賂として流れ、一部はタックスヘイブンのペーパーカンパニーを通じて隠し口座に収まる……そのすべてのカラクリを編み出したのが、栄光コンサルというわけだ。さぞかし感謝されただろうな、塩沢?」

鮮やかに描き出された構図に、ついて行くのがやっとだ。
まさかそんな大掛かりなことになっていたなんて……

「ま、待ってください、副社長」

と、そこで声を上げたのはお父さんだ。

「突然そんなことをおっしゃられても、正直私には何がなんだかさっぱり……えぇもちろん、もしそれが事実だとしたら、社内に相当な曲者がいるということでしょう。勝手を許したのは確かに私の責任です。私は金など受け取っておりませんが、早急にこちらとしても調査を行って――」

引きつった愛想笑いを貼り付けたまま、しどろもどろで言い募る。
狼狽を隠せていない時点ですでに真っ黒、とは思うものの、確かに誰が勝手にやった、って言えば証拠があるわけじゃないし……

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