ツンデレ副社長は、あの子が気になって仕方ない

「そんな……」

全エネルギーを使い果たしたかのように、ぐったりとしたお父さんがつぶやく。

その時だった。

突然ガバッと塩沢が立ち上がり、廊下に面した障子に駆け寄ると開け放ちそのまま――


逃げられる!!



心の中で叫んだ次の瞬間、廊下の向こうから聞こえたのは怒号と潰れたような悲鳴。

何が起こったのか、室内の私たちが疑問に思う間もなく、プロレスラー並みに屈強な男性2人に両脇から抱えられた塩沢が戻って来た。

村瀬家の落ち着いた反応を見ると、どうやらリーズグループの関係者のようだ。
まさかこんな事態になるかもと、最初から準備してたとか?

舌を巻く私の前で、「放せっ放せええええっ!」と見苦しく塩沢が暴れている。

「ちくしょうっ!! なんでだ!! リーズグループの力を使うなんて!! お前になんのメリットもないだろうがっ!! どうしてそこまでっ……」

今までの冷静さはどこへやら、口汚く吐き捨てる様子を冷ややかに一瞥し、貴志さんは肩をすくめた。

「リーズグループのお膝元ともいえるシンガポールで、つまり、総帥の目の前でそんな犯罪が行われた。リーズグループ(我々)がそれを許すと思うか? 自分たちがやっていることの意味を、最初にもっと考えておくべきだったんだよ、お前たちは」

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