ツンデレ副社長は、あの子が気になって仕方ない
塩沢は拘束されたままどこかへ運ばれて行き、室内には再びお継母さんの咽び泣く声だけがこだまするという奇妙な沈黙が戻って来た。
私はというと、目の前で起こったことにただただ圧倒されて絶句するばかり。
まさかカラクリが海外にも及んでいたなんて。
きっと今井さんから話を聞いた貴志さんがシンガポールに繋がるカラクリに気づいて、手を打ってくれたんだろう。いつの間に2人がそんな話をする仲になっていたのかわからないけど……。
でもさすがリーズグループの組織力。個人でいくら調べていても、そんなの分かるはずがない。
舞台がシンガポールで本当によかった。
そうじゃなきゃ、きっと力を貸してくれなかったはずだもの。
ようやく普通に戻った呼吸を繰り返し、私はホッと肩の力を抜いた。
と、そこで、それまで黙って成り行きを見守っていた村瀬社長が「山内社長」と声をかける。
「自首をお勧めしますよ。総帥の一声があれば、すぐにシンガポール当局も捜査を始めるでしょう。いやもう始めてるかもしれない。自首は早ければ早いほどいい」
「そんな殺生な……一星が潰れてしまう……あぁそうだ、副社長! 織江を気に入ってくださるんでしたら、今すぐにでも差し上げますっぜひ我が家と縁続きになっていたただいて、お力添えを!!」
はぁ?
何が「そうだ」よ。何を言い出すの、お父さん!
座卓に太った身体を乗り出すようにして叫ぶ姿は情けなさすぎて、もはやため息しか出ない。ところが呆れかえる私をよそに、貴志さんはなぜか面白そうに「ほぅ」と眉を上げていて――
「それはなかなか魅力的なご提案ですね」
はぃ?
「そうでしょう! どうかお義父さんと呼んでください!」
お父さんてば、本気にしないでよ、もう……冗談に決まってるでしょ?
ギラギラと目を輝かせている父親が目に入り、羞恥のあまり身体を小さくしてしまう。
「嫌よそんなの、ダメだってば! キララはどうなるの!?」
「うるさいっ黙ってろ!」
「ねぇお母さん! 何か言ってよ!」
「黙ってなさい! そんなことどうでもいいのよ!」
「どうでもいいって!」
「今はそれどころじゃないの! お母さんの気持ちも考えてちょうだい、ひどい子ね! お父さんが浮気っうぅうう……」
「何よっみんなひどいっ! うわぁあああああん!」