ツンデレ副社長は、あの子が気になって仕方ない

あぁもう阿鼻叫喚、収拾不能……
なんとかしなきゃと私は急いで膝を前に進め、村瀬家の方々に向かって、できるだけ丁寧に頭を下げた。

「村瀬副社長、どうか父の戯言はお気になさらないでください。今後については、家族で話し合います。本日は本当にいろいろと失礼を――」


「協力しても構いませんよ、一星の廃業回避」

え?


「ほほっほんとですかっそれはありがた――」

踊りだしそうな勢いで歓喜するお父さんを、「お気持ちはありがたいのですが」と急いで止める。

「お受けするわけにはいきません。うちに関われば、御社の評判まで下げてしまいかねませんから。どうか放っておいてください」

そもそもすべてのきっかけは、貴志さんを守りたかったから。
ここで彼の力を借りれば、それが水の泡になってしまう。

「いいのか? 従業員全員、路頭に迷うことになっても?」

「そ、それは……」

痛い所を突かれて口ごもる私を見つめて、彼が精悍な頬をふと緩ませた。

「意地を張るな。こっちだって条件をつけるんだから、ウィンウィンだろ?」

「じょ、条件、ですか?」

「さっき山内社長が言ってたヤツだ。ま、そっちから言われなくてもオレから提案するつもりではあったけどな」

お父さんが言ってた……?
え、それってまさか……いやいや、まさか……?

疑問符を貼り付けた顔を恐る恐る上げた先――貴志さんはふふんと鼻先で笑う。

それはそれは楽しそうな、ドヤ顔だった。


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