ツンデレ副社長は、あの子が気になって仕方ない
もう必要ないし彼の連絡先は消そうと思っていたのに、バタバタして忘れていた。
どうしようかな、と考えていたら画面がチラ見えたのか、「なぁ」となぜか不穏な声音が降ってくる。
「ずっと聞きたかったんだが、Sって誰だ?」
胡乱げに聞かれて、そういえば貴志さんには同居初日にSからの着信を見られていたんだっけ、と思い出す。
「まさか、この期に及んで他に男がいるとかじゃないだろうな?」
剣呑に尖る眼差しはどこまでも本気で、ギョッとした。
「な、何言ってるんですか! そんなわけないじゃないですかっ今井さんです! リアルデイズの今井さんのことですよ!」
ほら、とライン画面を開いて見せる。
そこには、“一星の社長令嬢として、リアルデイズの独占インタビューを受けてくれないか。もちろん、副社長もぜひ一緒に!(スマイルマーク)”、という、彼以外に書き得ないメッセージが表示されていて。
自分が騙してた相手に対して、よくもまぁ、商魂逞しいというか調子良すぎるというか……ま、無視するけどね。
呆れ気味で吐息をつく私。
一方貴志さんは、「今井? だって、今井満、だろ? どこにSの要素があるんだ?」と不思議そうだ。
言われてみれば確かに……、と私も考え込む。どうしてSにしたんだっけ?
何しろ、登録したのは2年以上前のことだからな。
記憶も曖昧だ。つまり、それほど重要なことではなかった、ってことで……
「……えっと、たぶん、“週刊誌”のS、だったと思います。あの時はすぐに消すつもりだったし、特に深く考えもせずにわかればいいやってくらいで、適当に入力したというか」
「適当……?」
ショックを受けたように繰り返した貴志さんは、「適当……マジか」ともう一度つぶやきながら両手で顔を覆って空を仰いでしまう。