ツンデレ副社長は、あの子が気になって仕方ない
ねぇお母さん、嘘よね。
あの人が、いい人なんかであるはずない。
お母さんや私を見捨てて苦しめたあげく、他の女性を愛したあの人が。
そうよ。
私は許しちゃいけない。
お母さんの代わりに、あの人をずっと……
胸元のチャームに指先で触れ、動揺する気持ちを落ち着かせていると、後ろからそっと両肩に温かな手が乗った。
「楽しみだな、どんな紫陽花が咲くのか」
振り仰ぐと、私を見下ろす貴志さんと目が合った。
醜い感情を洗い流すような優しい笑みに、ざわつく鼓動がスッと凪いでいく。
「貴志さん……」
「紫陽花の花言葉は、“家族団らん”だろ? 新しい生活を始めるオレたちにぴったりだし、いっそのこと一戸建てに引っ越して庭を――」
団らん? 家族?
慌てて、「ちょ、ちょっと待ってください」と口を挟んだ。
「違いますよ? 紫陽花の花言葉は“浮気”です」
「ぅ浮気っ!?」
ギョッと目を見開いた貴志さんだったが、「それはおかしい」とすぐに首を振る。
「あの庭を管理してる業者から聞いた花言葉だから間違いないし、そもそもそんな花言葉があったら、紫陽花専用の庭を作るなんて祖母さんが許してるはずはない」
祖父は婿養子だったんだ、と説明されても、困ってしまう。
私だって、ちゃんと昔本で調べたんだもの、紫陽花の花言葉は――
「両方正しい、が正解ですな」