ツンデレ副社長は、あの子が気になって仕方ない

「織江お嬢様がお着きになりました」

暗めのマホガニーブラウンで統一された応接間に通された私は、壺やら絵やら、増殖を続ける継母好みの美術品たちをヒンヤリした目で眺め。
それから、奥のソファへ視線を移した。

Tシャツにカーディガンという恰好のお父さんが、読んでいた新聞を畳んで脇へ置く。随分前に帰宅していたのか、くつろいだ姿だ。
その横に、マイセンだかどこだかの高級そうなティーカップを傾けるお継母さん。

塩沢さんの姿は見当たらない。もう帰ったようだ。
あの爬虫類みたいな目は苦手だったから、それだけでも上々ってとこか。


「何か用があるって聞いたんですが」

ぶっきらぼうな口調になってしまうのは、許してほしい。

大学卒業後に念願だった一人暮らしを始めてから、ここに帰ってくるのは年に1度か、2度がせいぜい。それまでの軋轢のせいもあって、すっかり自分の家っていう認識も、家族っていう意識も希薄になってしまい、“ただいま”なんて言葉すら出てこなくなってしまった。

そんな可愛げのない娘は、実の親といえど疎ましいんだろう。
寄越される視線はよそよそしい。

お母さんが元気だった頃は、お父さんももっと優しかった。

よく一星百貨の屋上遊園地へ連れて行ってくれて、一緒に遊んでくれた。
売り場もバックヤードも見せてくれて、美しく魅力的なものであふれたその広大な空間に夢中になったっけ……。

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