ツンデレ副社長は、あの子が気になって仕方ない
「キララさんはね、お茶のお稽古に行ってらっしゃるのよ」
聞いてもいないのにお継母さんが教えてくれて、私は現実に引き戻された。
アラフィフとは思えないほど、彼女は確かに若々しく美しい。シミやシワも全くないように見えるし、中年太りに突入してるお父さんと違ってスタイルもいい。
ブランド物のド派手なワンピースだって似合ってしまう。今夜のように。
キララと並べば、私よりよっぽど姉妹らしく見えるだろう。
一体全身にどれだけお金をつぎ込んでいるのやら。
「ねぇあなた、キララさんがお茶の先生に褒められたお話、したかしら。とてもお手筋がいいんですって。お免状をとったらどうかって言ってくださってるのよ。ご本人の方はねぇ、大したことないって謙遜されてるんだけど、どう思う?」
「あぁ、いいんじゃないか? 卒業して時間もあるんだし、花嫁修業にもなる」
「そうよねぇ。そうそうそういえばキララさんて、ピアノがとってもお上手でしょ。白井さんの奥様が、今度おうちのパーティーで演奏して欲しいっていうの。キララさんにやってみなさったら、っておススメしてみてもいいかしら」
自分の子どもに敬語を使うのは、日本語として正しいんだろうか?
この人と話すたびに感じる違和感に早くも疲労を覚えつつ、早く用事を済ませてくれないかと胸の内でぼやいた。
「あぁそうだな。ぜひ私も聴きに行こう」
いつもだと、この調子で延々とキララの自慢か、最近行った海外旅行やクルージング、購入したブランド物の自慢へとなだれ込むんだけど……
だから、お父さんがガラステーブルに置かれた大判の白い封筒をこちらへ滑らせた時はちょっと驚いた。なんと、今日は早々に本題へ入るらしい。
でも、なんだかこの大きさって、まるで――
「ようやく、先方が見合いを前向きに考えると返事をくれてな。ご子息に話をしてみてくれるそうだ」
身体の横で一瞬だけ、拳をきつく握った。
……あぁ、やっぱり。
ついに来たってことか。この時が。