ツンデレ副社長は、あの子が気になって仕方ない

「まぁあちらはお忙しい方だし、実際に会うのはまだまだ先になるだろうが。一応心づもりはしておきなさい。文句はないだろうな?」

「……私に任せてくれるっていう話だったと思いますけど」

一応控え目に主張してみたものの、もちろん無駄な足掻きだ。私に拒否権はない。

結果的に、タイミングとしては本当にギリギリのところだった。
最後の最後で副社長に抱いてもらえて、ラッキーだったと喜ぶべきだろう。

頭の中で目まぐるしく考えていると、それを私に押し付けるようにお父さんはもう一度、封筒をぐいっとこちらへ押しやった。

「こっちとしては2年も待ってやったんだ。十分だろう。キララの結婚も近い。3つも年上の姉がまだ片付いてないなんて、外聞が悪いし。見合いの予定さえ入れておけば、一応“話が進んでいる”と言い繕うことはできるからな」

外聞か。
外聞で、娘の一生の問題を決めるんだ?

「まぁ期待はしとらんが、少なくとも好印象は残しておけよ。当然、見合いの席で仕事の話が出たらな、結婚後はすぐに退職して妻としての務めを果たしますと言うんだぞ」

え……すぐに退職?
そんな話は聞いていない、と私は伏せていた顔を上げた。

「お父さん、寿退社なんて……」

今の時代に合わない、と抗議しかけた私を遮るように、ギョロっと落ちくぼんだ目が動く。
「家庭を二の次にするようじゃ、いい妻になれるわけがないだろう。しがらみなくいつでも辞められるようにうちで雇ってやったし、派遣の仕事も斡旋してやったんじゃないか」

「そうですよ」と横からお継母さんも参戦する。

「いろいろ考えてくださったお父様のご配慮を、踏みにじるような真似は許しませんよ」

< 44 / 345 >

この作品をシェア

pagetop