ツンデレ副社長は、あの子が気になって仕方ない
遠くで聞き覚えのある子どもっぽい高い声がして、パタパタとスリッパが床を叩く軽い音が近づいてきた。
「ねぇねぇ、お姉ちゃんが来てるんだって? ――って、ほんとにいたぁ!」
強烈なカナリヤイエローのワンピースをひらめかせて現れるなりこっちに指を突きつけたのは、キララだった。
ミルクティーベージュに染めて緩く巻いたロングヘア、小動物を思わせる大きな丸い瞳、それを縁取る二重瞼、ちょっと上を向いた小さめの鼻、ぽってりとした色っぽいピンクの唇……
相変わらず可愛い。
これだけは、お継母さんの身贔屓じゃなく本当のことだ。
「わぁ珍しーどうしたのーお姉ちゃん、相変わらず不幸そうなカオしてんねー」
……性格には疑問符をつけたいけど。
それに今日は何より……、酒臭っ!!
お茶のお稽古じゃなかっけ?
どんな種類のお茶を飲めば、こんな匂いになるのよ。
あっという間に充満する濃い酒気に、さすがに気づかないはずはない、と思うのに――
「あらあら、今日のお稽古も楽しかったみたいね」
「あ、あぁ、結構なことだ。花嫁修業は女の務めだからな」
両親はスルーすることにしたらしい。
うろつかせた2人の視線は、残念ながらとても痛々しい。
でも本人はいたって普通に入ってくると、ソファに――お父さんとお継母さんとの間に――すとんっと勢いよく腰を下ろした。
「ねぇねぇ、お姉ちゃんもう聞いたぁ? キララ、彰さんと結婚するの」
「あぁ、そうみたいね。おめでとう」