ツンデレ副社長は、あの子が気になって仕方ない

「やだぁ、車なんて何台あってもいいじゃない。ねぇお母さん」
「その通りよ。新居にはやっぱり新車が必要ですものね。ご近所の目もあるし、フェラーリなら我が家にもぴったりだわ」
「さすがお母さん、よくわかってる! それでね、新婚旅行の時にマルタ島の別荘を使いたいの。あそこでパーティーを――」

マルタ島にも別荘があったのか、知らなかった。
いつも通り、延々と続くどうでもいいやり取りに嫌気がさして、ついため息が漏れてしまった。

しまった、と口を閉じた時にはもう遅い。
目ざとく見つけたキララが、お父さんに甘えるように身体を寄せる。

「あー見て見て、あのつまんないってカオ。妹が結婚するのに喜んでもくれないなんてひどぉい! 人としてどうなの、それ」

姉の恋人を寝取るのは、人としてどうなの。
心のつぶやきが伝わったのかどうか知らないが、お継母さんの視線がきつくなる。

「本当に冷たい子ねぇ。ますます心配。お見合いで粗相したりしないかしら。私の教育が行き届いてないせいだって思われたら嫌だわ」

「えっお見合い? お姉ちゃんが!?」

知らなかったらしい。
獲物を見つけた猛獣みたくその目が光ったような気がして、ギクリとした。

「えぇそうよ。この人にはもったいないくらいの人。キララさんに決まったお相手がいなければ、絶対にキララさんですぐ決まりだったのにねぇ」

そう言って、ちょっと悔しそうに顔をしかめる。
珍しいこともあるものだ、この人が私の相手を気にするなんて。

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