ツンデレ副社長は、あの子が気になって仕方ない

「何かありました?」

『うん……実はさぁ』

話を聞いてみると、彼のお客さんの中に以前から事業提携の件で専務との面会を希望していた人がいて、なんと今、アポなしで来ているのだそうだ。

会うまでは帰らないと言い張っているそうで、困った受付嬢から担当の営業さんに指示を仰ぐ連絡が入った、ということらしい。

『うちとしては、あんまり魅力のある話じゃないんだよ。だから専務も自分が関わるつもりはないって言ってて、それも伝えたんだけど聞いてくれなくて。まぁ一応長い付き合いの会社だから、無下にもできなくてさ』

言葉の端々から、迷惑がっていることが伝わってくる。
営業マンって大変なんだな。

どうやら彼も今外にいてすぐに顔を出せないため、専務専任秘書(ノリちゃん)に代わりに対応してもらいたかったようだ。

『嶋さんもいないんじゃ、やっぱり俺が帰るしかないな。山内さん、悪いんだけど、空いてる会議室押さえてその人のこと案内してもらってもいい? 30分くらいでなんとかそっち行けるようにするから』

「ご案内すればいいんですね? わかりました」

相手の名前を聞いてから受話器を戻した私は深呼吸を繰り返す。

今は仕事中。副社長と高橋さんのことは、帰ってから考えよう。

自分に強く言い聞かせて、会議室の空き状況を確認するためにパソコンへ向かった。

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