ツンデレ副社長は、あの子が気になって仕方ない
「一星辞めたって聞いた時は、心配したんだぜ? でもよかったな、こんなでかい企業に入れるなんてさ。ま、どうせお義父さんのコネだろうけど」
誰のせいで辞めたと思ってるのよ。
言い返したくなるのをぐっと堪え、代わりに、上階へと移っていくフロア表示を怨念を込める勢いで凝視した。
佐々木君とは、大学時代にサークルで出会った。
将来の就職を見越して外国語を磨きたかった私は、留学生をサポートするグループに所属していて、他大学ではあったが彼もそこのメンバーだったのだ。
ちょっとチャラい言動はあるものの、(よく言えば)ジャニーズ系の甘いマスクだし、御曹司っていうバックボーンもあるしで、いつも華やかな人垣の中心にいるような人だった。
告白された時は騙されてるんじゃないかと一瞬疑ったくらい。
でも人気者の彼に選ばれたことが単純に嬉しくて舞い上がっていた私は、すぐにOKし、お付き合いがスタートした。
明るくて話題も豊富な彼と過ごす時間は楽しくて、いつしか結婚まで妄想するようになっていた。お父さんに愛されなかった自分でも、新しい家族を愛することはできるかもしれない、そう考えると天にも昇る気持ちだった。
でも、幸せな時間は長く続かなかった。
就職して1年も経つと、徐々に彼からの連絡が減っていく。
デートの回数が減り、電話やメッセージの数が減り……。
なのに、ブラックな職場で多くのトラブルを抱え疲弊しきっていた私は、彼の変化に気づきながらもその状態を放置してしまった。
後から考えれば、危うい要素はあったんだ。
在学中から2年以上付き合ってたのに、まだ私たちはその……シてなかったから。