ツンデレ副社長は、あの子が気になって仕方ない
何を言ったのか、どうやって帰ったのか、覚えてない。
ただただ惨めで、消えてしまいたい――真っ黒な底なしの闇に飲み込まれてしまいそうだった。
その後すぐに2人は婚約を発表、キララの大学卒業を待って結婚することになり、その話は瞬く間に知れ渡った。
うちの百貨店でも彼のブランドを取り扱っていたから、両親は喜んだし、社内も歓迎ムード一色。
もちろん思うことは多々あったが、今更何を言っても無駄だってことはわかった。もう彼は、キララのものなのだ。
私なりに、前を向かなきゃと必死で忘れる努力をした。
ところが……
奇妙なことに、なぜか社内の一部で、私が彼をストーカーしてたとか、妹から奪おうと彼を脅迫したとか、根も葉もない噂がいつの間にか広がってて。
精神的にも追い詰められた私は、退職を選ばざるを得なかった。
幸い、新しい職場で働き始めてからは未経験の仕事を覚えるのにいっぱいいっぱい。充実した日々のおかげで、いろんなモヤモヤをようやく過去のものにできた。
噂を広めた犯人については、ほぼ間違いなく佐々木君かキララだと思ってるけど……そのおかげでこんないい職場に巡り合えたわけで。
人生なんて、どう転ぶかわからない。
そう思うと、彼の浮気もキララとの結婚も、今は何もかもどうでもいいって気がするから、人間なんて単純なものだ。