ツンデレ副社長は、あの子が気になって仕方ない
「お前がおれに抱きついてきた、って上に文句言ってもいいんだぜ?」
性懲りもなく伸びてきた腕が腰に回され、彼の方へと強引に引き寄せられて、さすがに焦った。
「やめてっ……何するのっ!?」
「言っとくけど、ここの専務とは父さんの代からの付き合いなんだよ。みんなはどっちの言い分、信じるだろうな?」
「……っ」
脳裏に過ったのは、いつかの好奇の目だ。
――聞いた? 山内さん、アウローラの御曹司のことストーカーしてたんだって。
――相当積極的に誘惑したらしいよ。妹の婚約者なのに。
――えー何したんだろー。
――なんか、会議室に呼び出して、服脱いで迫ったって!
――うわ、えっぐー! 大人しそうな顔してるくせにー。
――ああいう真面目そうな人に限って、中身ドロドロしてんだって。
――それ、間違いない! あははははっ……
同期も、同僚たちも、みんなみんな潮が引くように離れて行った。
誰も、私の言葉を信じてくれなかった。
「デパートに噂流したの、やっぱり佐々木君だったのね」
「噂? さぁ、なんのこと?」
自分のものじゃない手が、腰まわりをやわやわと撫でる。
嫌悪感で全身が粟立つようだった。
「ほら、とっととさっきの態度謝れよ。そしたら優しく抱いてやってもいいぜ? ま、ヨリは戻してやらないけどな!」
最低っ……
「謝るはずないでしょう! もういい加減にして!」
逃げ出そうともがいてみるが、小柄とはいえやはり男。
がっちりと私の身体に回された手はびくともしない。
「お前のそういう可愛げのないとこ、昔からムカついてたんだよ。だから男ができねえんだっつの」
苛立ちを露わにした言葉と共に手が伸びてきて、顎を掴まれた。
「い、いやだってばっ……!」
顔の位置をくいっと動かされ――キスされる!
私はギュッと目を閉じ、声を張り上げようと息を吸い込んだ。
ガチャ