ツンデレ副社長は、あの子が気になって仕方ない
だしぬけに、会議室のドアが開いた。
「な、なんだお前はっノックもしないで!」
慌てた佐々木君に突き飛ばされ、椅子にすがりつきながら態勢を整えた私の視界に、ドア口に立つその人物が映った。
「失礼。うちのアシスタントがなかなか帰ってこないので、どうしたのかと心配になりまして――で? どういう状況ですか、これは」
淡々と低く響く、抑えた声音。
信じられないことに、それは副社長だった。
低姿勢ながら、長身の彼から放たれる威圧感は凄まじく、佐々木君はマズいと思ったのか挙動不審気味に私から離れ、「あーえっと、こ、この女が!」と指をつきつけてきた。
「この女が誘ってきたんだよ。こっちは全然その気もないのにさ。抱いてくださいとかなんとか。とんだビッチだよな!」
「なっそんな――」
「廊下まで彼女の嫌がる声が聞こえてましたが」
「は、はぁ? んなの、演技に決まってるだろ。女は嘘をつくんだよ。そういう生き物なの。だいたいなんだよお前、おれがウソついてるって言うのかよ! おれは石原専務の客だぞ? このおれにそんな口きいていいと思ってるのかよ!!」
「石原……」
顎に手をあてて黙り込んだ副社長を見て自分が優位だと思ったのか、佐々木君はふん、と鼻で笑う。
「社内で男漁りしかできないような社員を置いているなんて、おたくも大したことないなぁ」