ツンデレ副社長は、あの子が気になって仕方ない
結局今日はあの後外出してしまい、彼女を捕まえることはできなかった。
ただそれだけのことが、悔しくてたまらない。
どうしたって言うんだ、オレは――
「おやおや、それじゃ回しすぎですよ。君がそんな素人みたいな真似をするなんて、何かあったんですか?」
揶揄う様な声が聞こえ、無意識にグラスを揺らしていた手をハッと止めた。
隣のスツールを誰かが引く気配――げ、と声が洩れそうになった。
「……オレは一人で飲みたい気分なんだけど?」
胡乱げに言ってみたが、インテリ眼鏡をかけたブランドスーツの男は構わず腰を下ろしてしまった。
「いいじゃないですか。久しぶりなんだし?」
レンズの奥で、すっきりとした切れ長の瞳が微笑む。
和装が似合いそうな塩顔で、ワインよりも抹茶を嗜んでいそうな雰囲気の男だ。
「あぁ確かに久しぶりだな、いつぶりだっけ? 中条瑠衣をホテルに送り届けてやった夜以来、だっけ?」
皮肉全開で睨んでやったのに、「その節はありがとうございました」、と邪気のないバカ丁寧な口調で返されて、イラっとした。
「あの夜はとても助かりました。御曹司が迎えに来た、っていうシチュエーションが彼女もお気に召したようで。終始ご機嫌でしたよ」
ふん、自分だって御曹司のくせに。
「あのな、いい加減オレを隠れ蓑にするの止めろよ。2人とも独身なんだし、堂々と付き合えばいいだろうが」
「そうしたら他の女性と付き合えないでしょう?」