ツンデレ副社長は、あの子が気になって仕方ない
さて――と、震え続けるスマホを手に、オレは首を傾げる。
親父から電話? なんの用だろう。
昼間もオフィスで顔を合わせたばかりなのに……
不思議に思いつつ、人けのない廊下に出たところで、通話をオンにした。
「はい、もしもし、親父?」
『その言い方はやめなさい、お父様と呼ばんか』
「呼んで欲しいのか?」
『……背中が痒くなりそうだな。止めておこう』
諦めたような口ぶりで言ってから、親父は口調を変えて『ところでな』と話し出す。
『見合いをしてみないか』
「……は?」
み、見合い?
もたれていた壁から、身体をベリッとはがした。
「ちょっと待ってくれよ。結婚なんてまだ……」
『お前が、わざと遊んでる風を装ってまで仕事に集中しようとしていることはわかってる。だがな、そろそろいいだろう。後継者としての資質を疑う声は、もう聞こえない。お前はよくやっている』
はぁ……やっぱり来たか。
まぁ、30を過ぎたし、そろそろだろうなとは思っていた。
『それに、昔ならいざ知らず、今のお前はリーズニッポンの次期社長という立場だからな。早く身を固めておかないと、見合い写真の山で遭難することになるぞ』
「……それ、全然笑えないから」
うんざりした声をだすオレに、親父はカラカラと快活に笑った。
『まぁ、とはいっても今の段階でも候補者は一人じゃないし、私の方でこれから絞ろうと思っているが。その前に、お前の希望も聞いておこうと思ってな』
「別に、希望なんて……」
そう言われて過った面影を、慌てて打ち消す。
なんでここで彼女が出てくるんだ。