ツンデレ副社長は、あの子が気になって仕方ない
「特に、ないけど」
『そうか、わかった。ではそのうち、まずは写真を見せるから。そのつもりでいなさい』
「……あぁ、わかったよ」
仕方なく了承し、通話を終了する。
見合い、か……
会社のために、最適な伴侶と結ばれること。
副社長の椅子に就いた時から、それが自分の役目だと覚悟はしてた。
今まで散々好き勝手やらせてもらったし、それくらいはしようと。
だからこそ、あえて特別な一人を作らずにきたはずなのに。
なのに今になって……
なぜこんなにも、気が乗らないんだろう?
訳もなく重苦しい気持ちを抱えてフロアへ戻ると、カウンター席で笑い合う侑吾とユキが見えた。随分話がはずんでいるように見える。
はた目にはお似合いのカップルなんだがな。
「付き合っちまえばいいのに」
おそらく侑吾は、ユキの気持ちに気づいているだろう。
そしてユキも、気づかれていることに気づいてる。
でも、何も言わない。
2人の関係を変えるようなことは、何も。
知っているからだ。
侑吾がいろんな女に手を出しているのには、理由があるってこと。
本命がいるのだ。
ただ、その人からまったく相手にしてもらえないため、満たされない想いを他の存在で埋めている、という。
もちろん、それが自分ではないことも、ユキは承知している。
交わらない、2つの想い――うまくいかないものだな、と考えながら近づいていくと、ユキがこっちに気づき、席を譲ろうと腰を浮かしかけるのが見えた。
「オレはこっちでいい」
手を挙げて制し、彼女を挟むようにして侑吾とは反対側の椅子へ腰を下ろした。