ツンデレ副社長は、あの子が気になって仕方ない
「昔の恋人に対する嫌がらせ、それをストーカー行為というんだろ? 執念深い奴もいるから、油断しない方がいい」
「そ、そうかもしれませんが……昨日はたまたま再会して、面白がって揶揄ってきただけだと思うんです。彼にはもう婚約者もいますし」
「相手がいるからといって、ストーカーにならないという保証はない。違うか?」
えぇええ?
意外と頑固な彼の言葉に、こっちもちょっとムキになって「でも」と再度反論する。
「私はこちらの正社員ではありません。ただの派遣社員で、住む場所とか、そこまで気を使っていただくわけには――」
「うちで働いてくれてる以上は、うちの社員だ。社員の身の安全は、責任を持って会社が守らなきゃならない」
うぅ……なに、この暖簾に腕押し感。
言ってることは間違ってないし理解できるから、余計に困る。
こうなったら、辞めようと思ってること、ここで伝えてしまおうか。
派遣会社に伝えるのが先、というのがセオリーだとはわかっているけど……
しかしこっちに口を開く前に副社長は長身を翻し、「ほら、早く着いて来て」と歩き出してしまう。
「実は、もう少し時間がかかるらしいんだ」
「はぁ……」
そりゃ、昨日の今日だもの。会社が契約してるアパートだったとしても、ある程度時間は必要だろう。あぁますます申し訳ない!
「だから、先に何か食っとこう。苦手なものはあるか?」
「はぁ……て、はっ?」
ぽかんとみっともなく口を開けてしまう私。
食う? って、ご飯? 一緒にっ!?
いろいろわからなさすぎて、頭の中はカオス状態。
なのに、そうやってボケっと固まっている間にも、副社長はズンズン先へ行ってしまう。
「……あぁのっちょっとお待ちください、副社長っ!」
こ、ここはひとまず追いかけるしかなさそうだ。
私はバタバタと夢中で帰り支度を始めた。