雨宮課長に甘えたい【2022.12.3番外編完結】
「今、お茶を淹れますから。もう少し待って下さい」

お茶を淹れながら、心を落ち着ける。

大丈夫。何を聞いても大丈夫。
例え課長が犯罪者だったとしても私の気持ちは変わらない。

「お待たせしました」

お客様用のカップに注いだお茶をテーブルの上に置いた。

「ありがとう。いただきます」

課長が静かにお茶を飲んだ。

ちゃんと課長の表情を見ながら聞きたかったから、今度は課長の隣には座らず、テーブルを挟んだ正面に座り背筋を伸ばした。

「奈々ちゃん、いや、中島さん。今から話す事は決して誰にも言わないで欲しい。まずそれをお願いしたい」

じっと課長に見つめられて、頷いた。

「はい。他言しません」

「ありがとう」

課長も背筋を伸ばして、緊張したような表情を浮かべた。

部屋の空気が少しだけピリッとする。

「実は俺は30歳の時に離婚している。結婚していた相手というのが佐伯リカコでね。彼女との間に子どもが一人いたんだ。彼女は今は人気女優だ。だから俺と離婚していて、子どもまでいた事はスキャンダルになるかもしれない。それで他言しないで欲しいとお願いした」

佐伯リカコと結婚……。
子どもが一人……。

胸を大きく揺らす、衝撃的な言葉が次々と課長から出てきた。
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