雨宮課長に甘えたい【2022.12.3番外編完結】
温泉旅館に着くと、茜色だった空はいつの間にか琥珀色の満月が昇る群青色に変わっていた。
竹藪に囲まれた三階建ての和風の建物に見覚えるがあると言ったら、雨宮課長が「思い出したの?」と眉を上げる。
「ごめんなさい。ホームページで見ていたから」
あまりにも嬉しそうな顔をされたから、記憶喪失のままなのが申し訳なくなってくる。やっぱり雨宮課長は私に思い出してもらいたいんだ。
このまま思い出せなかったら……。
「なんで謝るの? 奈々ちゃんは悪くないよ。さあ、行こう」
雨宮課長が私の分の旅行鞄も持って入り口に向かって歩き出した。
その背中を慌てて追いかける。
藤色の着物姿の中居さんが案内してくれた部屋は広い中庭にある数寄屋造りの離れだった。
部屋に入った途端、清涼感あるイ草の匂いが香ってくる。青々とした畳が敷かれた和室は広縁付きの10畳間と12畳間の二間続きで、走り回りたくなる程、広い。
まさか、こんなにいい部屋に泊まれるとは思わなかったので、ただ、ただ驚いている。
「内風呂と露天風呂もついている特別室ですから、楽しんでいって下さいね」中居さんが私たちにお茶を淹れながら言ってくれた。
「では、お夕食の時間にまた参ります」
中居さんが下がって、雨宮課長と2人きりになる。
竹藪に囲まれた三階建ての和風の建物に見覚えるがあると言ったら、雨宮課長が「思い出したの?」と眉を上げる。
「ごめんなさい。ホームページで見ていたから」
あまりにも嬉しそうな顔をされたから、記憶喪失のままなのが申し訳なくなってくる。やっぱり雨宮課長は私に思い出してもらいたいんだ。
このまま思い出せなかったら……。
「なんで謝るの? 奈々ちゃんは悪くないよ。さあ、行こう」
雨宮課長が私の分の旅行鞄も持って入り口に向かって歩き出した。
その背中を慌てて追いかける。
藤色の着物姿の中居さんが案内してくれた部屋は広い中庭にある数寄屋造りの離れだった。
部屋に入った途端、清涼感あるイ草の匂いが香ってくる。青々とした畳が敷かれた和室は広縁付きの10畳間と12畳間の二間続きで、走り回りたくなる程、広い。
まさか、こんなにいい部屋に泊まれるとは思わなかったので、ただ、ただ驚いている。
「内風呂と露天風呂もついている特別室ですから、楽しんでいって下さいね」中居さんが私たちにお茶を淹れながら言ってくれた。
「では、お夕食の時間にまた参ります」
中居さんが下がって、雨宮課長と2人きりになる。