雨宮課長に甘えたい【2022.12.3番外編完結】
どうしようか迷っていたら、「そろそろ行くね」と低い声が言った。
行くって旅館内の散策?
「あの、どちらに?」
「俺の部屋」
えっ……。
この離れの部屋に一緒に泊まるんじゃないの?
パチパチ瞬きをしていると、「言ってなかったっけ?」と聞かれて、頷く。
「俺は本館に部屋を取ったから」
「本館?」
「いくら一緒に住んでいると言っても、俺たち寝室は別だし、俺と同室だと気を遣うだろ?」
まあ、それはそうだけど……。
「夕食はここで一緒に食べるから。それまで奈々ちゃん、この部屋を堪能して」座卓に手をついて雨宮課長が立ち上がる。
「えっ、でも」
「何かあったら連絡してね」
雨宮課長がスマホを掲げる。
「あの」
黒い旅行鞄を持って、雨宮課長が出入口に向かう。
「じゃあ、またあとで」
「あの、雨宮課長」
私の呼びかけに応える事なく、客室のドアから雨宮課長が出て行った。
今のは何? あんなに慌てて出て行かなくてもいいのに。
私と同じ部屋にいたくないって事?
車の中で考えた事が再び頭に過る。
記憶のない私と雨宮課長は一緒にいたくないのかも。
さっきも藤原さんの事を聞かれて思い出せなかったし。そんな私に雨宮課長は失望したの? もしかして私、嫌われかけているの?
この旅行が終わったら、別れようって言われるの?
思考がどんどん悪い方に向かって、雨宮課長が出て行った焦げ茶色のドアがぐにゃっと歪んで見えた。
行くって旅館内の散策?
「あの、どちらに?」
「俺の部屋」
えっ……。
この離れの部屋に一緒に泊まるんじゃないの?
パチパチ瞬きをしていると、「言ってなかったっけ?」と聞かれて、頷く。
「俺は本館に部屋を取ったから」
「本館?」
「いくら一緒に住んでいると言っても、俺たち寝室は別だし、俺と同室だと気を遣うだろ?」
まあ、それはそうだけど……。
「夕食はここで一緒に食べるから。それまで奈々ちゃん、この部屋を堪能して」座卓に手をついて雨宮課長が立ち上がる。
「えっ、でも」
「何かあったら連絡してね」
雨宮課長がスマホを掲げる。
「あの」
黒い旅行鞄を持って、雨宮課長が出入口に向かう。
「じゃあ、またあとで」
「あの、雨宮課長」
私の呼びかけに応える事なく、客室のドアから雨宮課長が出て行った。
今のは何? あんなに慌てて出て行かなくてもいいのに。
私と同じ部屋にいたくないって事?
車の中で考えた事が再び頭に過る。
記憶のない私と雨宮課長は一緒にいたくないのかも。
さっきも藤原さんの事を聞かれて思い出せなかったし。そんな私に雨宮課長は失望したの? もしかして私、嫌われかけているの?
この旅行が終わったら、別れようって言われるの?
思考がどんどん悪い方に向かって、雨宮課長が出て行った焦げ茶色のドアがぐにゃっと歪んで見えた。