雨宮課長に甘えたい【2022.12.3番外編完結】
「一緒にいて下さい。一人にしないで。雨宮課長が好きなんです」
眼鏡の奥の黒い瞳が驚いたように見開いた。

「……記憶が戻ったの?」
「いえ。まだ思い出せません。でも、雨宮課長を好きになったんです。好きで好きで苦しいです。助けて下さい」
「奈々ちゃん」
「記憶のない私ではダメですか?」
雨宮課長が首を振る。
「そんな事ないよ。記憶があってもなくても、奈々ちゃんが好きだから。一生思い出さなくてもいいと思っている」

記憶のない私も受け入れてくれるんだ。
嬉しい……。

「じゃあ、記憶が戻らなくても一緒にいてくれますか? 私と別れたいと思ってませんか?」

驚いたように眉が上がる。

「まさか」と言って、逞しい腕が私の背中に回り、抱きしめてくれる。
「一生、放さないよ」
熱い声に心臓がドクンって高鳴った。
そんな事言ってくれるとは思わなかった。嬉しくて、また涙が溢れる。

くしゃっと顔を歪めると、「奈々ちゃん、泣き虫だな」と言って、雨宮課長が唇で涙を吸い取ってくれる。驚いて、身を引こうとした瞬間、顎をくいっと掴まれて私の涙に濡れた唇と重なった。涙の味がするキスに胸がキュンとした。
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