だいたい死ぬ悲運の王女は絶対に幸せになりたい!〜努力とチートでどんな運命だって変えてみせます〜
「お待たせしてしまい申し訳ございません、王女殿下」
「ケイリオル卿!」

 謎の布を顔につけたその人はケイリオル卿。エリドル・ヘル・フォーロイト皇帝陛下唯一の側近たる男。
 アミレスを冷遇する皇帝陛下に代わり、色々と便宜を図ってくれる人らしい。剣や魔法を学ぶ事も彼経由で皇帝陛下から許可を取ったと聞いた。
 しかしそんな人までもが何故ここに……?
 首を傾げつつアミレスとケイリオル卿の事を眺めていると。

「……という訳ですので、あちらのゴミの方の回収の方よろしくお願い致します」
「はは。ゴミですか分かりました、焼却しておけばいいですかね?」
「適切な処理をしてからお願いしますわ。そのゴミ、ただのゴミではなくとっても悪いゴミですので」
「勿論ですとも。法に触れる悪いゴミは然るべき処理を行ってから処分しますから」

 黒い笑顔で男達をゴミと指さすアミレスと楽しそうにそれに答えるケイリオル卿は、ふふふふふ、と不気味な笑い声を上げていた。
 ケイリオル卿がどこからともなく取り出した麻縄で男達を縛り、引き摺りながら去って行くのをアミレスと二人で見送る。
 そして訓練場にオレ達だけが取り残されると、

「ごめんなさいマクベスタ! この国がこんなのだから貴方に我慢を強いるような事になって……!!」

 アミレスはとても悔しそうな顔でそう謝った。ちょっと待て、というオレの制止も聞かず彼女は続ける。

「……昨日ね、やっぱりあの怪我はおかしいって思ってエンヴィーさんに聞いたの。そしたらアレは誰かに執拗に嬲られた跡だ、ってエンヴィーさんが言ってて……ハイラに怪しそうな人がいないか昨日の間に調べて貰ったの。それでここの騎士が怪しいって分かって、もしかしたら今日もマクベスタが酷い目に遭うかもって。だからね、急いでケイリオル卿を呼び出して私自身もここに来て、だからその、えっと…………」

 オロオロと焦り困惑する彼女の口から忙しなく飛び出すオレを心配する言葉。それを聞いた途端、胸がじん……と熱くなった。
 ……あれ、なんだこれ。どうしてこんなにも胸が…………。

「もっとこの国がちゃんとしていれば、貴方に我慢させる事も怪我をさせる事も無かったから……本当にごめん」
「良いんだ。少なくともお前が謝るような事では無い。謝罪はきちんとあの男達から受けたんだ、オレはもう十分だ」
「マクベスタ…………」

 アミレスは子犬のように愛らしい表情でしゅんとなった。
 本当にアミレスの所為では無いのに、どうしてアミレスがここまで責任を感じているのか。
 本当に彼女は責任感が強く心優しい人だ。先程の冷酷無比なフォーロイトらしい姿よりも、こちらの素の姿の方がずっと似合う可愛らしい人──……。
 ってオレは何を考えてるんだ? いや確かにアミレスは世間一般的に見てもたいへん可愛らしい部類に入ると、ハイラさんやシルフや師匠がいつも話しているが…………改まって何を考えてるんだオレは。
 熱い、何故か顔が熱いぞ。病気か?
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