だいたい死ぬ悲運の王女は絶対に幸せになりたい!〜努力とチートでどんな運命だって変えてみせます〜
 片やアミレスを守ろうとし、片やアミレスを利用せんとする。
 この国のツートップとも言える男達──長き信頼を積み重ね、共に歩み同じ未来を見ていた二人は……ついに別々の未来を見る。
 それは本来起こり得ない分裂。ゲームでは最後まで同じ道を進んでいた二人は、この世界において別の道を選ぶ事となった。
 アミレスの異変により齎された変化。愛を求めずただ生き延びたいとがむしゃらに努力するアミレスにあてられ、ケイリオルの仮面が崩された事が理由であった。
 今までもこれからもずっとエリドルの後ろを歩く筈だったのに。ケイリオルは突如として道無き道を進み始めた。
 それは彼等の運命の分岐点。二人の深く厚き絆を捨て去る事になりうる分かれ道。
 この、本人達すらも気付かぬ僅かな亀裂が、やがて大きく取り返しのつかないものになるかどうかは、この世界の特異点たるアミレス次第なのであった──。


♢♢


「え、オセロマイトの件が解決した? マジで?!」
「マジです」

 カイルの軟禁されている部屋にて、アミレスが帝国に戻った日より更に数日後の事。
 コーラルよりオセロマイト王国の事件の顛末を聞いたカイルは鳩が豆鉄砲を食ったような顔になった。そんなカイルに向け、コーラルは軽く頷いた。
 コーラルは情報収集に長けた魔力を持っており、それで軟禁されているカイルに変わり情報収集等をしているのだ。その情報収集より舞い戻ったコーラルが一息つこうと紅茶を入れていると、カイルが慌てて彼に詰め寄る。

「どっ……どうやって感染症は終息したんだ!? 理由は、そもそもの原因は?!!」
「落ち着いてくださいカイル様、順に話していきますから!」

 鼻息を荒くし、冷や汗を滲ませるカイルにコーラルは落ち着くよう告げる。
 カイルが落ち着いたのを確認し、コーラルは自分が集めた情報をカイルに伝えた。カイルはそれを固唾を飲んで聞き、そして驚愕する。

「アミレス・ヘル・フォーロイトが草死病《そうしびょう》解決の立役者ァ?!」

 そんな馬鹿な、とびっくり仰天な顔でカイルは叫んだ。
 それもその筈。彼の知るアミレス・ヘル・フォーロイトは絶対にそのような事をしない。つまりそのアミレスはアミレスでありアミレスでない者という事。
 それにいち早く気づいたカイルは、もしもの可能性を考える。

(もしかしたら──アミレスも俺と同じ前世の記憶持ちの転生者って事か? だから俺同様、滅びの一途を辿る筈だったオセロマイトを救いに…………!)

 予想外の事態にカイルは思わずニヤリ、と笑みを浮かべた。
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