真夏の夜の夢子ちゃん
結局、スーパーで買えば100円でおつりがくるキャラメルの小箱に、1500円も費やした。

そもそも箱が小さいから射的の的としては難易度が高いということもある。
しかし、洸平が玉を外すたびに彼女がくすくすと楽しそうに笑うし、そうやって笑うたびに体が触れるので、洸平の心が穏やかではなかったというのが1500円も使うことになった理由だ。

「キャラメル獲って」
彼女がそう言うのだから、捕らないわけにはいかない。

洸平が心を掻き乱されてまでして獲ったキャラメルを、口の中で転がしながら舐めている顔があどけなくて愛おしい。

どさくさに紛れて、洸平は手を握った。すると、彼女もそれに応えるようにギュッと握ってくる。

天にも昇る心地とは、まさにこういうことを言うのだろう。

洸平と目が合うと、彼女はニコッと微笑む。めちゃくちゃかわいすぎて、どうしようもない。心臓のドキドキが止まらない。
この子のことを好きだと確信したから、余計にそう思うのだろうか。

それにしても、彼女はまた一段と大人っぽく綺麗になった。
白地に大きな花模様の浴衣も、よく似合っている。

去年、つきあっていた女の子と地元の祭りに行った。その子も浴衣を着て来ていたが…なんというか、派手でケバくて主張がすごすぎて。
全く、比較するのもおこがましいほど比較にならない。

「…浴衣、似合ってるね。すごく綺麗だ。」
洸平が言うと、「ありがとう」と彼女は顔を少し赤らめた。

あぁ、どうしよう。
繋いだ手を引き寄せて抱きしめて、全部俺のものにしたい。

彼女が欲しい物は全部買ってあげたかった。ぬいぐるみでも、狐のお面でも、たこ焼きでも、水風船でも。

しかし彼女は何もいらないと言う。

しばらく歩き回った後、2人は神社の裏手の軒下に並んで腰を下ろした。
屋台の明るさはここまでは届かないが、喧騒は伝わってくる。

等間隔に置かれた石灯籠の灯りが怪しげな雰囲気を醸し出していて、彼女と会う時はいつもこういう薄暗い場所が多いな、と思った。

2つ目のキャラメルを口に入れた彼女は幸せそうに、ふふっと笑う。
「キャラメル好きなの?」
洸平が尋ねると、頷いて「甘いから」と言った。

甘いからキャラメルが好きだなんて、まるで小さな子供みたいだ。ものすごく純粋で汚れを知らない、小さな女の子。

洸平は彼女の横顔を見つめた。

陶器のようにつるんとした肌に触れたい。その気持ちを抑えられずに、頬にキスをする。

驚いて見つめてくる彼女の潤んだ大きな瞳は相変わらずで、洸平は吸い寄せられるように顔を近づけた。

「会いたかった。」

そう言って、彼女の唇にキスをした。
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