暑い夏は冷たい晴に恋をする
「どーしたの?」と聞いてみると、大谷くんは持っていたスマホやらパンフレットをカバンにしまった。
「良かったらさ、あの鳥居、一緒に行かない?」
え?鳥居!?未だに大谷くんのことが曖昧になっていて、少し躊躇ってしまう。
しかし、自由行動終了10分前の今、まだ一瀬先生はいない。来る様子もなかった。
「わかった。一緒に行こう。」
2人で並んでいる間はたわいもない話をした。修学旅行の話とか、部活の話とか。
あっという間に番が来て、2人でお参りをした。大谷くんには申し訳ないけど、一瀬先生が私のことを好きになってくれますようにってお願いした。
「よしっ。天野さんは何をお願いしたの?」
「内緒だよ」
言えるわけが無い。その時だった。鳥居の先にいる大好きな人と目が合ったのは。その人は無表情でこちらを見つめていた。胸がたかなって、大谷くんに「ごめんね」と言って一瀬先生の元へ駆けつけた。
「一瀬先生!遅いじゃないですか!もうお参りしちゃいましたよー」
嫉妬してくれないかな?なんて高望みは、粉々に砕かれた。
「で?」
で?って…それだけ…?ちょっといつもより冷たい気がするのは私だけかな…?
「用がないなら、話しかけんな。」
言葉だけじゃない、態度だっていつもよりも冷たい。なんで?思わず泣きそうになってしまう。
「泣くなよ。まじでめんどくさい。」
わかってる。泣かせたくないならそんなこと言わないで欲しい。余計に目に水が溜まってしまう。はぁとため息を疲れ、何が先生をそんなに怒らせたのかが分からない。
「一瀬先生、良かったらあの鳥居お参りしてかない?って、お取り込み中だった?」
後ろからひょこっとでてきた朱里先生は、私の顔を見て驚いていた。
「あら、あなた、ダメじゃないの。前にも言ったでしょ。あなたと一瀬先生は生徒なんだから、その気持ちは一瀬先生を困らせるだけよ。」
うるさい。そんなのわかってる。でも、今怒ってる理由ぐらいは知りたい。
「大丈夫ですよ朱里先生。少し相談を受けてただけなので。」
相談って、大丈夫って。仮にも、目の前で女の子が何そうになってるんだよ?ていうかほぼ泣いてるんだよ?もし先生の中でわたしがただの生徒でも、泣いてたら話聞こうとか思わないの?
「そう?じゃあ、鳥居行きません?私お願いしたいことがあるの」
朱里先生だってそうだ。わたしよりも優位にいることをわかってるから。その態度がイライラしてたまらない。小雨が降っていたのに、いつ降ったかも分からないぐらい私の心は戸惑っていた。
「いいですよ。もう時間もないですし、行っちゃいましょう。」
え…?行くの…?私の所へは来てくれなかったのに…。言葉が出なくて、思わず、朱里先生と行こうとする一瀬先生の袖を掴んだ。
「どうした?まだ話したいことあるのか?」
一瀬先生は、いつもの冷たい感じではなく、先生モードできいてきた。すると横から朱里先生が私の手を払い除けた。