大好きな人とお別れしたのは、冬の朝でした
瞬が姉の恋人らしいと認識した以上、余計なトラブルは避けたい。
詩織は丁寧に瞬に挨拶した。
「申し訳ありません。明日からトレーニングが始まりますので、今夜はこれで失礼させてください」
「あ、ああ」
瞬も残念そうな顔をしたように見えた。
彩絵と会うために記者会見のあと急いでパーティーに駆けつけたのだ。
恋人たちの逢瀬を邪魔するようで申し訳なかったが、詩織にとっては姉の体調の方が大切だ。
瞬に会釈をしてから、詩織は彩絵を促してその場を離れた。
彩絵は瞬に手を振っている。まるで十代のような甘えた仕草だが、彩絵がすると絵になった。
(きっと彼も、彩絵に夢中なんだろうな)
美人で実力あるテニスプレーヤーだし、性格は可愛らしい。
『いつも男性から告白されて交際が始まるの』と彩絵からは聞いている。
彩絵が前の恋人と別れたのが半年前だから、沖田瞬とはまだ付き合い始めて日が浅いのかもしれない。
(今度こそ、長続きして欲しいけど……)
気まぐれな彩絵でも、こんな素敵な人となら上手くいくかもしれないと他人事のように詩織は思っていた。