大好きな人とお別れしたのは、冬の朝でした


よく似ていたからか、周りの大人たちは姉妹を見分けるのに『テニスが上手いのが姉』『可愛いのが姉』という言葉を使う。
両親も『お姉ちゃんの応援をしてあげようね』『お姉ちゃんの邪魔をしたらダメよ』と彩絵が最優先だ。
もちろん詩織も姉が大好きだから練習相手も喜んでつとめたし、試合の応援も一生懸命だった。
いつの間にか近藤家では、なにもかもが彩絵を中心に回っていた。

だが姉と違う高校に合格すると、環境がガラリと変わった。
周りの人たちが誰も姉妹を比べないし、おまけに詩織を褒めてくれるのだ。

『詩織ちゃん、今日の髪型いいね』
『期末テストの順位、中間テストより上がってたよ。頑張ったな』

そんな言葉を友人や教師からかけてもらえた詩織は、初めて自分に自信を持てた。

(詩織を見てくれている。詩織だけを評価してくれる)

姉のおまけでもなく、姉の模造品でもない。
自分と姉は違う人間なんだと初めて気がついたのだ。

(慣れるってコワイ)

あたり前だと思っていた暮らしは歪なものだったのだ。


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